この論文は05年10より始めたもので、三木谷が拡大化路線を極めていた時のものである。
楽天証券は、金融庁の行政指導により、手数料変更の延期を余儀なくされたようだ。三木谷にとって、屈辱的な出来事であろう。ヴィッセル神戸のカラー変更を契機として、さまざまに考えてきた。天から地へと続く表象のなかで、「楽天」の動きも注目しなければならない。三木谷も単なる思い付きで「カラー変更」を実行したのではない。理論的根拠が存在するはずである。「ベンチャー精神」とか「会社が変わった象徴」等の発言があったが、この問題を深く掘り下げていくことにより、三木谷の理論を解明すれば、白黒奪還は成し遂げられるだろう。
一般常識的な経営手法で「ヴィッセル神戸」を経営しようとするならば、「カラー変更」などない。ヴィッセル神戸の現状を見れば当然のことである。だが、三木谷は実行した。これから検証していく理論が存在したのだろう。1年の蓄積により、さまざまなデータを集めることが出来た。少しずつ、時間を遡ったり、縦横に問題点を見ることにより、解明していきたい。金融論と言っても、金の流れを考えていくという程度のもので、素人の能書きである。三十有余年前、友達の奥さんが「これからは給料も物価も上がっていくのだから、借金して家を買わなくては」と言った。素人の金融論だ。この程度と考えていただきたい。
「リンク社」買収で、その意図を探っていたら、「NECと楽天、大規模エクイティファイナンスの裏事情(超眼、2003/11/25、japan.cnet.com)」が目に付いた。公募増資によるエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)の発行条件についてだが「発行する新株を購入してくれる需要」と「既存の株式の希薄化」に対応するため、「業績見通しが順調な推移と見込めること」により「最近の株価が上昇基調を維持するなど」が必要だろう等の記事があった。
この03年の公募増資により、「実質331億円のDLJの買収や「旅の窓口」の買収に伴って買い入れた175億円の返済などに充当する。これにより今期決算期末での債務超過は回避できる見通しという」ことである。
注目したいのは、03年の段階で「債務超過」の可能性があったという指摘だ。又、三木谷流で「債務返済」といいながら債務が増えていることに注目したい。三木谷は何を考えているのだろうか、いずれ、多くの経済学者が「楽天」のことを検証しだすであろうが、その魁となる栄誉を担いたい。
10/4 三木谷の金融論序説U(意図するもの)
三木谷は、「夢を語ろう」で「新生ヴィッセル神戸の基本戦略常勝チーム体制の早期樹立クラブ経営及び運営にベンチャーマインドを導入前例にとらわれない新しいマーケティング施策の実施」で三目標を掲げた。約、一年半が経過し、最下位争いと観客減である。私の、三木谷の経営者としての資質に問題があるというのは、ヴィッセル神戸の段階においてはほぼ証明されたと思う。「カラー変更」も意味がなかったことも証明された。
次の段階として、彼の本業である(楽天)を中心として、さまざまな要素を勘案しながら、三木谷の金融論を考えていきたい。論文であるから、事実を中心に噂などは除外するのは当然である。
基本方針として、「企業価値の最大化」と「業績予想をしない」との間にあるものを解明したい。この二つの語句を結び合わせれば、言質を取れれずに一目散に企業価値を増大したいとの思いが感じられる。企業価値を高めるのは経営者の義務ではあるが、その方法論を有る程度開示する義務があるのではないだろうか。三木谷の本質に迫りたい。
10/6 三木谷の金融論序説V(定義)
これから、三木谷の金融論を考えて行く訳だが、用語の定義をしよう。
1.企業価値
企業の将来利益と将来資産とする。三木谷の意図としては、マーケッチング諸策により顧客からの利益を最大化し、IR諸策によって投資家からの信用を最大化する。
2.コーポレートガバナンス
A.(狭義) 企業の所有者である株主により選任された取締役会が、業務執行を行う執行役員を任命・監督するという制度。
三木谷は「楽天」の取締役会会長であり、国重が代表執行役社長となるのだろう。三木谷夫妻が株式の過半数を支配しているのだから、三木谷が国重に業務執行をさせているということになる。
B.(広義)企業の株主、社債権者、 従業員、取引先、消費者、地域社会といった利害関係者の利益を、IR活動や消費者を取締役会に参加させること等により、企業を長期的かつ安定的に成長させる制度。
三木谷が、この意義を真に理解していたならば、「カラー変更」はなかった。
3.コーポレートアイデンティティ
(狭義)企業理念をブランド等に表象したもの。
(広義)企業理念を明確にし、そのための行動指針を公表して、ロゴマーク等をその象徴とするもの。
三木谷は、「社会的責任」は口にするものの、具体的に何をするのかは分りづらい。野球参入でも「ミッション」と表現した、具体的成果は「黒字化」であっつたが、あまり評価されなかったようだ。三木谷の企業理念は「企業価値の極大化」であり、その目標である「流通総額一兆円」のため、ロゴマークを統一した。三木谷が社会的責任を自覚していたならば、「田尾解任」はなかったと思われるので、コーポレートアイデンティティの定義も二つにしたい。
4.マーケティング
(狭義)市場において、既存業者に対抗して、低価格と新商品等で顧客を獲得するための競争をする、敵対業者が淘汰された後、新価格と又別の新商品で利益を確保すること。
三木谷がMDM(マジカルとは魔法と取れる)から、楽天市場と名称変更したのは、「楽に天下が取れる」市場なのかもしれない。
(広義)市場において、顧客の動向を参考にしながら、企業が生き延びる方法を模索していくこと。
グーグルで「ネット通販、下着」で検索したところ、第一位のサイトでは「料金後払い」となっていた。楽天市場も、狭義のマーケティング諸策で負けているのではないか。消費者の立場に立てば、「料金後払い」は自明である。
10/14-2 三木谷の金融論序説Z(ルーツをたどる)
1.三木谷良一
これから、三木谷の金融論の源をたどろう。まずは、父親である。神戸大学のHPで次の論文が確認できる。
アジア・ダラー・マーケットについて ―シンガポール市場を中心として―預金金利規制について ―アメリカにおける経験と議論(1)―
証券市場とマネー・フロー
Portfolio選択理論の序説的考察
Financial Intermediariesについて ―とくに第二次大戦後におけるSavings and Loan Associationの発展について―
(神戸大学経済経営研究所、経済経営研究叢書(金融研究シリーズ))
内容については読んでいないので判らない。ただ、三木谷は父のアメリカエール大学赴任に伴いアメリカの小学校に転校したことと、三木谷良一氏はアメリカの金融理論に詳しく、その薫陶を受けてことを確認しておきたい。
2.一橋大学商学部
銀行の頭取を目指したのであるから、会社法、商法、銀行実務等を学んだのであろう。三木谷の結婚式の仲人は花輪教授だ、と言う事は花輪教授の薫陶を受けている。花輪教授のネットで見つけた論文を上げておく。貨幣論が多い。
「貨幣理論」
金融システムの構造変化と日本経済
貨幣数量説と金融経済論の間
「貨幣制度とインフレ−ション──フリ−ドマン貨幣理論の検討」
短期金融市場金利とマネーサプライ
3.ハーバード大学
アメリカでは、敵対的買収が華々しく行われ、さまざまな理論が成立した。金融工学やマーケティング理論も進化した、これらを、三木谷は得たものと思われる。
4.北尾吉孝
三木谷は、興銀時代にソフトバンクのM&Aの担当であった。孫正義の起業精神に触れ、起業の志を起こしたわけだ。その孫正義の理論を担ったのが北尾氏だ。時価総額を高めることが株主価値を高めることになるとして、株価を吊り上げて、M&A資金を得る経営手法を日本に持ち込んだ。三木谷が「企業価値」と言うとき、この意味だと思われる。
10/20-2 三木谷の金融論序説Ⅺ(孫正義の軌跡)
三木谷は興銀時代、孫正義のM&A担当であった。彼から、大きな影響を受けたことは間違いない。重要事項を検討したい。
1.ストックオプション
1985年には、当時商法では禁止されていたが、第三者を経由することにより可能にし、社員の志気を高めた。
2.94年7 月の株式公開
ソフトバンクの株式公開は、公募価格1万1000円に対して、1万8900円の初値がついた。孫正義は大金を得て、マスコミの寵児となり、「日本のビル・ゲイツ」と言われた。この時、三木谷は孫正義の「夢」と北尾の「理論」が日本に新しい「企業価値」という概念を植えつけるのに立ち会った。
3.96年9月、テレビ朝日買収事件
孫正義がマードックと組んでテレビ朝日買収に乗り出した、しかしテレビ朝日側の防衛網は硬く、97年3月、フジの日枝氏の登場により損得なしの和解となった。
この時、三木谷はクリムゾングループとして、立ち会っている。この後、三木谷は孫正義と決別した。何が有ったかは不明だ。
10/28 三木谷の金融論序説14(時価総額極大化経営)
北尾氏がソフトバンクで行った短期的に事業を拡大する方法で、アメリカのベンチャー企業が取った方法を日本に持ち込んだものだ。もう、北尾氏はこの理論を捨てたようである。今、三木谷がTBSとの統合を標榜したのは、この理論を踏襲したものと思われる。三木谷の行動が「BAKA BOMB 」なのか「CLEVER BOMB」なのか、不明な時点ではあるが、リアルタイムで考えていきたい。
11/4 三木谷の金融論序説15(ゲーム感覚経営)
三木谷の人間性とTBSに対する統合提案を勘案して、彼の行動様式を「ゲーム感覚経営」と命名したい。ヴィッセル神戸での「カラー変更」が、ファンサポならずJリーグ関係者の心情を無視したものであったことは、その傍証である。彼の金融論が北尾氏の理論を踏襲しながら、うまくいかないのは、現実から乖離しているからだろう。
楽天の成功は、本城氏、晴子氏、その他支援者たちの賜物である。しかし、「流通総額一兆円」という「夢」のために、「カリスマ経営者」という虚像を現前したかったので、一人で成し遂げたように見せた可能性がある。彼が、業績予想をしないのも、傍証の一つになろう。現実から乖離した経営には無理があるのだから、結果はおのずと現れるだろう。これから、検討していきたい。
11/6 三木谷の金融論序説16(時価総額極大化経営2)
時価総額極大化経営とは、個人投資家を対象とし、「企業価値」が未来に於いて高まるとマスコミを利用して宣伝することにより、公募増資や社債発行などで資金調達をし、得た資金で成長企業を買収するサイクルを繰り返すこと。順調に行けば、いいが、三木谷のTBS統合提案は、頓挫したようだ。三木谷は、判っていたのだろうが、この危険な賭けの意味を探らねばならぬ。
11/9-2 三木谷の金融論序説17(時価総額極大化経営3)
三木谷の金融論にとって、個人投資家は重要である。時価総額を極大化するなどという言葉に反応するのは個人投資家だけだろう。ましてや、業績予想をしない経営者に投資するファンドも付き合いで買っているだけだと思われる。金余りで、市場が沈滞しているときは、新興企業が注目されるだろうが、それも長続きしないだろう。
11/11-2 三木谷の金融論序説18(時価総額極大化経営4)
個人投資家に対する三木谷の態度を、11月9日のIT PLUSが「決算発表の場で出た『今回の騒動でブランドイメージが下がったのではないか』という質問に、三木谷氏は『正々堂々とやっている。マイナスの影響はない』と反論した。しかし、本来、ユーザーや顧客が判断すべき評価の問題を、当事者が『影響なし』と言い切る物腰自体が、比較的オープンマインドな対応を好むネットユーザーからは支持を得にくい可能性があり、かえってブランドイメージを損ないかねないとすら言えそうだ」と論評した。
11/17 三木谷の金融論序説18(時価総額極大化経営4)
11月16日付で金融庁が楽天証券に対して業務改善命令を出した。行政指導の後もシステム障害を引き起こしたからである。三木谷は短期的に業績を上げ、決算発表で次の計画を打ち出すというサイクルを繰り返さないと株価を維持できないと考えているからだろう。
11/19 三木谷の金融論序説19(時価総額極大化経営5)
楽天の株価が低迷し始めたようだ。有利子負債、本業の低迷、財界から嫌われだした等の悪材料があるのだろう。三木谷の本質が、マスコミ等の報道により周知されてきたといえる。何時までも、拡大局面は続かないということだ。経営者というものは、道理を知らねばならない。三木谷は、その道理を知りたくないということであろうか。
11/23 三木谷の金融論序説20(中間報告として)
約二年間、三木谷を研究してきた。中間報告として、問題点を列記したい。
1.浅薄な理解力
楽天の成功は、ハーバード大学でのM&A理論を基礎として、北尾氏の「企業価値極大化」の方法論を踏襲している。だが、言語の定義で見るように、三木谷流に解釈しなおすことにより、消費者や利用者の利益を消し去っている。企業の存立が、社会的なものであることが理解できないからであろう。
2.責任感の無さ
ヴィッセル神戸において、「夢を語ろう」で三年計画を打ち出した。ところが、形勢が悪くなると、ヴィッセル神戸のHPから消し去ってしまうのだ。単なる、プレゼンテーションだからということだろう。ファンサポは何を信じればいいのだろうか。楽天においても、業績予想をしない。結果責任を取らなくてすむようにするためだろう。そして、赤字決算でありながら、配当はしているのだ。
3.危険予知能力の欠如
三木谷の成長過程において、スパルタ教育が多大に影響を与えていると指摘してきた。「常に前進」との脅迫概念を植えつけられてしまえば、行動を起こす場合に失敗の可能性を検討しなくなる。これは、ヴィッセル神戸での監督交代劇が傍証である。
これから、TBS経営統合問題が進展していく。三木谷の前途は多難であろう。時機を見て、本格的に三木谷の金融論を検討していこう。
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